Minna Kakeru

「VICE編集部が本気で選んだ、2010年代ベストアルバム100」を聴く – 前編 - Ueno.T

minna kakeru

自分が常にレコードを買っているような音楽好きのつもりでいても、年齢と共にいつのまにか狭い範囲でしか音楽を聴かなくなっています。しかも、それでいいと思ってしまうんです。好きなものだけ聴いてりゃいいじゃん、みたいな。

そうやってると、気付くともう20年ぐらい、現行の新しい音楽は知り合いのものぐらいしか聴かなくなっていました。でも、それで充分に満足してたし、同じ年の知り合いもみんなそんな感じか、まあそれ以上の強者とかもいますが、、、

 

2019年の終わり、ネットでふとある記事を目にして、それが今回のタイトルの、「VICE編集部が本気で選んだ、2010年代ベストアルバム100」、最新10年間の中からアルバムを100こ選ぶって、何だかスゴいなあ、と。後で、他の洋雑誌もそういうことをやっていたのを知りましたが、、、Pitchforkは200だっけ、、、

 

どっちにしろ、自分が人生最も洋楽の新譜を聴いていない時期になるわけです。リストをズラッと見ると、ヒップホップやR&Bが多くて、それ以外だとパンクかメタル中心でロックとポップスが少なめで、それが良かった。そもそも洋楽の新譜を聴かなくなったのも、日本の雑誌が盛り上げ気味に紹介しているロックがどれもいいと感じれなくなって、新譜を聴くのがつまらなくなっていったから、、、

 

このVICEの記事は、各ライターのも文章も独特でユーモアがあって、次々と読む気にさせた。その後で、海外のいくつかの雑誌のアルバムレビューの長さと書き方のバラエティを知った。ひたすら絶賛して煽るんじゃなくて、時には辛辣に、正直に正確に書こうとしてて、そのほうが、いいと思った時に本気でそう思っているのが伝わってきた。

 

厳選されたアルバムが100個もあるのに、自分が知ってるものがあまりにも少なく、聴いたことあるやつなんて更に少なかった。新しい音楽を積極的に聴かなかったとはいえ、かなりショックでした。「みんなが当然のように知っているもので、自分が知らないものが、こんなにたくさんあるのかー!」って思ったのでした。ここから、自分の失われた10年を取り戻す大作戦が始まった。

 

久しぶりに明確な目的を持ってレコ屋を回って、、、まず中古から探して、なければ新品を、みたいな。最近のものなんで、新宿と渋谷に行けば全部見つかるだろう、と思っていたんですが、、、ロック系はまだしも、ヒップホップやR&B、レゲトンのほうになるとかなりない、見つからない。正直かなり驚きました。レアなレコードを探してるわけじゃなく、雑誌が選んだ現行のベストアルバムがレコード屋にないなんて、、、

 

そして知ったのです。ヒップホップの、特にミックステープと呼ばれるものの多くは、フィジカル(CDやレコードなど物のこと)がないってことを、、、ちなみに当然、「ミックステープ」、「フィジカル」という言葉も知らなかったし、、、し・か・も、ミックステープの多くは、なんと無料!?フリーダウンロードと知って、ウルトラスーパー衝撃でした。「アルバムが無料っていう時代になっていたのか、、、」みたいな。

そして、DatPiffを見つけた時(正確に言うと最初に見つけたのは、MixtapeMonkeyだったけど)時、自分の中で何かが大きく変わったのを感じました。ていうか、しばらく猿のようにDLする日々が、、、まさにミックステープ・モンキーですな、この歳で、、、

 

で、現在に至るわけですが、あれからもう1年以上たつんだあー、と思って今回は記念に、あの頃の体験を何とか蘇らせつつ、今だとどう思うか、100位から聴いて買いていこうかな、と思います。AOTYの簡易版順位表に、勝手に書いてあるジャンル名も、おもしろいので参考として載せていきます。

 

 

 

まず100位、いきなり衝撃の音楽だったSALEM「KING NIGHT」(2010年、WITCH HOUSE)、暗くて鬱屈として美しくてカッコよくて新しくてすげー最高だー、と思いました。こんな音楽聴いたことないー、みたいな。ウィッチハウスなんて知ってるワケない、、、リリースがちょうど10年前、、、

調べても、残されたMVを観ても謎が深まるばかりっていうのもよかったです。この記事読んで最初に聴いたのがコレだったんで、「このベスト100を全部しっかり聴いてやろう!」てモチベーション爆上がりしたはずです。今聴いても、後続の人達や音楽、サブジャンルとかの枠を飛び越えて、今なお燦然と輝く傑作アルバムだと思います。次の年に蛇足のように出たEP「I’m Still in the Night」ですら、有難く聴きました。

 

去年、この作品以来の10年ぶりの新譜「Fire in Heaven」が出て、おおおっ!?って思いましたが、霧がかかってるような雰囲気がクリアになって、声がおじさんになったかな、、、ニック・ケイブを聴いてるような気分になります。自分は「King Night」の衝撃が強すぎたんで、こっちの新作のほうは蛇足のように思えてしまいました。個人的にリスナー的に勝手なことを言わせてもらうと、謎なままのほうが良かったなあー、みたいな。

 

 

99位、CARDI B「INVATION OF PRIVACY」(2018年、TRAP RAP」、なるべく100位から聴いていったんで、このアルバムで初めてトラップやレゲトンを初体験しました。だから、衝撃強すぎて、最初何なんだか分からなかったぐらいです。これとFutureのアルバムを聴いたので、かなりショックでした。トラップ初体験ってわけです。「え、なんでこんなハット、チキチキしてんの!?」みたいな、、、そして、めちゃめちゃカッコ良く思えたんですよね、トラップ。めちゃめちゃ新しく思えたんですよね、トラップを、2019年の暮れに、、、今思えば、どんだけ周回遅れやねん、て話ですが、、、

 

で、Cardi Bのこのアルバムを聴いたってことは、ゲストのMigos、Chance The Rapper、Bad Bunny、J Balvin、21 Savage、SZAもここで初めて聴いてることになるんですよね、、、こうして並びを見ると、その時ショックを受けつつも、内容全体のスゴさにひたすら感心したのも頷けます。現在、彼女の唯一のスタジオアルバムですが、とにかく全曲いいし、バラエティに富んでいるのにバッチリ統一感があるし、完璧なアルバムです。本当に全曲いいんですが、自分は特に「Ring」が大好きで、このキーボードリフと少し寂しげなメロディラップは、何度聴いても切ない気持ちになります。抜群の名曲だと思います。

 

いちおう、この名盤の前に「Gangsta Bitch Music」というタイトルもジャケも、ミもフタもないミックステープが2つあります。内容は意外とマトモで、色んな曲調がありますが、どれもポップな感じがあります。どちらにもJosh Xという人が参加してる曲「Selfish」、「Never Give Up」は、特に異色な感じでおもしろいです。「Everything」は甘酸っぱい思い出系の切ない曲で、なかなかいいです。「Break It Up」では既にレゲトンを取り入れてて、この曲もいいです。
とにかく自分は、このアルバムでトラップ第1波をくらった感じでもあり、今でもこうして聴くと、「なんていいアルバムだー」って思います。いつか、セカンドアルバム聴きたいですねー。

 

 

98位、M83「HURRY UP, WE’RE DREAMING」(2011年、DREAM POP)、リバイバルミュージックっぽくて(実際そうですが)、自分には特に新鮮味は感じれなくて、2曲いい曲があったって感じでした。でも、アルバムに2曲いい曲があるって、充分かもしれない、、、

 

 

 

97位、(SANDY) ALEX G「HOUSE OF SUGAR」(2019年、INDIE FOLK)、これは、懐かしい感じでもあり、衝撃でもありました。Lo-Fiブームの頃の香りがしつつ、更に狂っててカオスでポップで今風で色んな物が混ざってる感じ。滲み溢れ出る、強烈な才能を感じました。この人は10年近く、コンスタントに作品をリリースしているんで、ちょっと順番に聴いていきます。

 

2010年に、最初のアルバム「Race」が出ています。ジャンク気味なインディーフォークバンドって感じで、アコギ、バンジョー、エレキギター、ベース、ドラム、キーボードの組み合わせで、時々変ですが、基本はしっかりバンドサウンドです、意外、、、そして2011年「Winner」では、なぜか音が悪くなってフォークロックに終始しています。曲は少し変でポップな感じになりましたが、まだ比較的普通のインディーローファイフォークって感じです。同じ11年に出た6曲入り15分半のEP「Easy」は、ふにゃふにゃした静か目なバンドサウンドで良曲揃いの作品です。これはすごく良かったです!

 

12年に「Rules」と「Trick」の2枚が出ます。「Rules」は「Easy」路線を引き継いでエレキバンドサウンド色が強くなっています。結果、更に普通にインディーバンドのアルバムみたいになっています。時々おやじロック要素もあります。「Trick」のほうも同じ感じですが、少し変な音やエフェクティブな音が入り始めて明らかに変なポップ曲も入り始めています。このアルバムの後半ではかなり「House Of Sugar」につながる感じが聴けます。この後半はかなりいいなあ、、、

 

とまあこう書いていくと、ここまで作品毎に変化があるようですが実はそんなに変化があるわけでもなく、ずっと同じ雰囲気でもあります。地味な小さな変化を軸に聴いていってるだけです。今ままでのところ印象としては、曲はまじめにずっとひたすら書いてて、だんだん独特なポップを獲得しているように思えます。

 

13年の5曲入り9分のEPでは、結構実験的要素に執着していて、なかなかおもしろい内容です。そして初フィジカルリリースでもある14年の「DSU」は、進化したソングライティングと滲ませた実験性が融合してかなりいい内容になっています。続いてついにDOMINOリリースとなった15年「Beach Music」では、冒頭で音の悪いめちゃくちゃな曲がありますが、メジャーデビューの照れなのか、、、その後は更に進化した作曲と独特なアレンジが炸裂しています。これはモロにニール・ヤングなのでは、、、みたいなやつもありましたが、、、

 

DOMINOからの第2弾でもある17年「Rocket」は、まず音が良くなっています。大きなレーベルになって1番の変化は、いいマイクが買えたことかな、とかインタビューで言ってました。今回のオープニングはカントリー風味で、前回と真逆でとても入りやすいです。全体的にアコースティックな感じが強く、もちろんそうじゃない曲も例によって突発的に入ってますが、今までの総力戦といった感じで非常にいいアルバムです。

 

そしてこの記事に紹介されている、今のところ最新作の「House Of Sugar」ですが、作曲、アレンジ、音質、すべてが大躍進しています。おそらく歌詞もそうでしょう。これはすごい領域のアルバムだと思います。いくつかの曲が素晴らしいんですが、「Taking」と「Project 2」、「Sugar」はポップスとかそういうジャンルを楽々超えて、本当にスゴい曲だと思います。これは次は、、、とか思っちゃいます。まだ出てないですが、、、

 

少しずつ色んなことがだんだんおかしくなって最新作が1番おもしろいっていう、、、だから混沌っていうのは、意図的であり成長なワケですね、、、実際このアルバムでは、一見トリッキーに思えるアレンジも、しっかり曲の良さを引き出していて感動的です。天才性がどんどん開花してきている感じです、、、

 

 

96位、NOTHING「GUILTY OF EVERYTHING」(2014年、SHOEGAZE)、カッコいいな、とは思いつつも、オルタナグランジみたいだなって思うぐらいでした。

 

 

95位、MACINTOSH PLUS「FLORAL SHOPPE」(2011年、VAPORWAVE)、これもかなり衝撃でした。ヴェイパーウェイブなんて知らなかったわけで、、、調べようとしたら、もはや広がりに広がりすぎて終わってる、ぐらいの情報量でした、、、この人は別名義のVEKROIDでは多作系で、ヴェイパー感覚のオリジナル(なのかな?)で、全部聴いたわけじゃないですが、かなり好きな感じでした。

 

ジョン・ケージ、ヒップホップ以来の新しい出来事だったんじゃないでしょうか。新しい概念で、聴いたら自分にもできそうでやってみたくなるっていう点では、フォークやパンク、ヒップホップに近いかもしれません。そして即効性や拡散性もあり中毒性もある。そして無名性も、、、少し未来の、そしてフレッシュなのに既にノスタルジック。自分の演奏家の知り合いは、ヴェイパーウェイブ嫌いか全然興味ない人が多いけど、自分と同い年の人たちが今だに昔のロックとか好きで聴いていたりい、そういう音を演奏してるのって、ある意味ヴェイパーな光景です。
これ、エクスペリメンタル・サイケの名盤扱いでいいんじゃないでしょうか。

 

 

94位、THE HOTELIER「HOME, LIKE NOPLACE IS THERE」(2014年、EMO)、これも特に新鮮でもなく、普通というか、、、

 

 

93位、SKRILLEX「SCARY MONSTERS AND NICE SPRITES」(2010年、DUBSTEP)、とことんアッパーでイケイケで、ちょっとついていけないかなー、と。10年前の作品なのに今聴いても新しい感じなのはスゴいなあー、て思います。例えば今だと100 Gecsっぽいとことか、、、でもそんなに好きじゃないかなあ、100 Gecsは大好きですが、、、

 

とここまで書いて終わっていたんですが、やはりこれをきっかけに他の作品も聴いてみようと思って、2011年の「Bangarang」を聴いてみました。こっちのほうがやや好きかな、最後の「Summit」はいい曲、、、唯一のスタジオアルバム(1枚しか出してないの意外)「Recess」も聴いてみます。「Doompy Poomp」、すごい変なおもしろい曲だな、、、他には、いい曲かな、と思うと何でこんなに盛り上げるんだろう?ってなって、やはりそんなに印象変わりませんでした。
あと、宇多田ヒカルが歌う「Face My Fears」も聴いてみましたが、何ともチグハグなトラックでやっぱりついていけない感じでした、、、

 

 

 

92位、ALYSIA CRAMPTON「AMERICAN DRIFT」(2015年、ELECTRONIC)、これは静かな衝撃でした。全然分かりやすいわけではないのに、聴いてると色んな感情が喚起されるというか、色々な要素がコラージュされている感じなんですが、どこの国かどの時代かも分からない(未来も含む)、誰かの記憶の中のような、残されたコンピューターの記録のような、不思議な感覚です。

こういう音楽は好きです。映像ともまた違う体験というか、、、

 

この人は結構多作ですが、bandcampでほとんど聴けます。「American Drift」以前の作品もありますが、それらは当時「E&E」もしくは「E+E」の名義で出していたものの一部です。bandcampにはないですが、探した感じ最初の作品は、2008年の「E&E」で、スーパーシンプルドラムマシーンにスッカスカのプリセットシンセ、そこにかわいい女性ヴォーカルたちが乗っかるという、好みで言えばど真ん中の感じで、最高でしたです。80年代ニューウェーヴの香りもします。初期衝動とワンアイデアが尊く感じます。これ、自分には相当名盤だな、、、12年の「Promise」は45分延々サンプリングとコラージュを霧に包んだ感じで、これはいかにも遊びで作った感じです。

 

13年の「The Light That You Gave Me To See You」は、少し前までbandcampにありましたが、現在はないようです。Youtubeのほうにはあるけど、1曲削除されているので権利的な問題ですかね。確かに、街の音などと合わせて既存曲っぽいのもサンプリングされているから、、、作品の内容としては、8曲30分足らずぐらいの尺ですが、密度が高いので充分フルアルバムあるような感じで、前述のものが暴力的にコラージュされてる中で、時折ラテントラップみたいなものも聴こえ、歌とギターソロが組み合わせられてたり、過去と現在をミックスさせながら強烈なカオスを起こし、すべてが並列に進みながらも独特のフィーリングを喚起させるという、エクスペリメンタル・ラテンエレクトロニックの傑作になっていると思います。

 

そしてこの「American Drift」なんですが、こうして聴いていくとかなり聴きやすいほうなんだな、と思います。彼女の生まれ育ったカリフォルニア南部とメキシコ北部の歴史と地理、そしてルーツのボリビアの研究ろ考察から作られた音楽らしいです。興味なくてもサウンドは充分独特でカッコいいです。

 

16年には、今度はボリビアの伝説の女性革命家Bartolina Sisaを題材にした演劇作品の音楽だった「Demon City」が出ます。これも、そういうことに興味がなくてもめちゃいいです。ただのいいテクノ曲じゃん、とかでもいいと思います。ところが17年の「Spots y Escupitajo」になると再びとっつきにくいサウンド、内容になります。まあ、もともとポップスをやろうとしてるわけではないだろうから、その時その時の興味ある題材をもとに作品を作ってるんでしょうけど、、、

 

18年、自身の名前のアルバム「Elysia Crampton」は6曲20分足らず、とややコンパクトですが、カッコいい強めの独特なリズムが中心のタイトな曲揃いの内容。やや凶暴な圧迫感があるトライバルテクノというか、かなり硬派な感じです。クラブミュージックとしても、もちろん聴けますが、これらの曲は今聴いても尚斬新さがあり、未来にすら聴こえます。そのぐらいのオリジナリティとクオリティがあります。結構ヤバいアーティストなんじゃないか、と再認識させられます。

 

続いて去年の2020年に「Ocorana 2010」という、インスタレーション用の音楽だったものが出てて、これはカリフォルニアのシエラネバダ山脈を何年も囚人消防士として働いていたPaul Sousaという人に捧げられています。インスタレーションは光が乱反射する暗い部屋でトランスするような感じのものだったらしく、まあそういう感じの音です。シンセドローンや朗読など、サイモンFターナーみたいな感じ。これは結構退屈でした。

 

今のところ最新作は、bandcampにあった「Selected Demos & Edits 2007 – 2019」で新作ではないですが、全16曲どれもこの人らしさが出た独特でカッコいいトラック揃いで、寄せ集めかと思いきや内容の良さに驚きます。この人は何だかんだ言って、普通に曲がいいですよね。しかも12年間の中から選んでるわけでもありますよね。これはかなりオススメです!
でも結局は、最初の「E&E」がいっちゃん好きです!

 

 

91位、GOJIRA「MAGMA」(PROGRESSVE METAl)、プログレッシブ・メタルなんて言葉があるとは、、、そういえばメタルはジャンル分けやたら細かいですよね?ユニオンに行くといつも感心します、、、MAGMAっていうバンド(実際にいます)の「Gojira」ってアルバムかと思いました、最初。リフがおもしろいです。メタリカ、好きだったんですが、こういうのは今はそんなに好んで聴くことはないです。

 

 

 

90位、MAC MILLER「SWIMMING」(2018年、POP RAP)、最初聴いた時は正直、ヴォーカルがGラブ&ザ・スペシャルソースみたいだな、とか、ヒップホップを白人が利用してるヤワな感じ、とか思ってたんですが、アルバムの後半に差しかかると、いい感じだな、とか、曲がいいな、とか思い始めて、最後まで聴いた時は、いいアルバムだあー、てなってました。その後、彼がいかにヒップホップが好きで、精力的に色んな人とコラボしたりみんなの場所を作ろうとしたりして、ジャンルへの貢献度が高いことを知って最初の印象を反省しました。最近では、やれ「K.I.D.S」だ「Faces」がサブスク化!ってなってますが、昔も今も、全部DatPiffでフリーダウンロードできるんですよね、、、

 

最初の作品は、まだ2007年の「But My Mackin’ Ain’t Easy」ですかね、Easy Macって名義でリリースされています。かなりオールドスクールな感じでラップは若者イキりな感じで、曲は既にいいです。「In Love With This Bud」とかは、おおっ!って思いました。次の09年「The Jukebox: Prelude to Class Clown」は曲が倍以上に増えて21曲も入ってて勢いが増してる感じです。同じ年に更にまた21曲入りの「The High Life」が出ます。個人的には「Travellin’ Man ‘09」が好きな曲でした。「Thank For Coming Out」ではユーリズミックスの曲の歌詞とメロディがラップに紛れ込んでいて、おっさんはおおっと思いました。

 

次の年も快進撃は続きます。18曲入りの「K.I.D.S」、1曲目「Kickin’ Incredibly Dope Shit」からいいトラックです。2曲目「Outside」ではトラップじゃないおもしろいハットが入ってます。トラック自体はノスタルジックな感じで、おもしろい効果です。「Senior Skip Day」はかわいらしいオシャレなキーボードリフがいいです。「The Spins」ではなんとブリバリなミドルテンポエイトビートで、めちゃ80年代キャッチーで、おっさんはウキウキしてきます。いやーいいなあー、、、

 

「Don’t Mind If I Do」ではふわふわディレイシンセがポップに炸裂していてビートもちょっとトリップホップぽくてカッコいいです。こういうのに弱いです。「Good Evening」はR&Bヴォーカルの早回しループで切ないいいトラックです。

「Ride Around」はふわふわワウワウギター(かな?)の音と微妙にいいコード進行がいいです。「Knock Knock」では古いアメリカンポップスっぽいコーラスのループで、明るいキャッチーなトラックで、すごくいいです。

「Face In The Crowd」は哀愁漂いながら盛り上がってくる切ないトラックとラップがかなりいいです。最後の「La La La」は、映画音楽っぽいコード進行が美しくて少しさびしい雰囲気で、これもいいトラックでした。このように、特にトラックが確実に断然良くなっています。天才ですねー。

 

絶好調のまま次の年、11年に「Best Day Ever」が出ます。またしても1曲目「Best Day Ever」から最高の雰囲気。終始ドラムレスでドリームな感じ。もう既に感動があります。続く2曲目「Get Up」は、引き継ぐかのようにオリエンタルなシンセフレーズが耳に残るゆったり4つ打ちのいい曲です。これも感動。3曲目「Donald Trump」も始まりから感動です。子どものランラン系コーラスが、ナウシカの風の谷に連れていってくれます。

そのままチャイルデッシュなムードでポコポコした呑気キーボードで童謡のようないい曲「Oy Vey」です。遊び心があるラップもいいです。5曲目「I’ll Be There」はソウルでオールドスクール無難にやって、次の「Wear My Hat」もカリカリベースが曲引っぱるのったりファンクな感じです、、、

あれ、なんか全曲解説みたいになってきた、、、まあいいか、たまには、、、

 

7曲目「Wake Up」と次の「All Around The World」は、ちょっとポップス寄せすぎですかね、、、9曲目「Down The Rabbit Hole」は、冷ややかで穏やかなアルペジオシンセとドローンシンセの静かで少し不安な雰囲気。かなりいい曲だと思います。10曲目「In The Air」も穏やかさを引き継ぎますが、希望を感じるキャッチーなキーボードがいい雰囲気で、落ち着いているのにテンポは速く、ラップもかなり早いです。これが不思議な効果を生んでいて、名曲になっていると思います。

 

あとは、「Life Ain’t Easy」は素人っぽい素人系キャッチーキーボードフレーズのいい曲です。最後(ボーナストラック?)の「BDE」は、逆回転プチプチ音から浮遊感のあるポツポツシンセとブレイクビーツが入ってくる、限りなくトリップホップなトラックですごい好みでした。

 

このように、ほとんどの曲が良くて、しかも音楽的な幅も広がっています。ラップも抑制が効いた感じが増えて表現力が増しています。これはかなり名盤じゃないでしょうか。この年は他にも2枚アルバム出てて、1つは「I Love Life, Thank You」という全体的にソウル、R&Bっぽいミックステープ、もう1つはついにスタジオアルバムデビューの「Blue Slide Park」です。このアルバムは、全体的に気合の方向が自分の好みと違いました。「Loitering」って曲は変なテクノブレイクビーツみたいなトラックでおもしろかったです。

 

スタジオアルバムが大ヒットしても、ミクステ出し続けています。すごい創作エネルギーです。2012年は17曲入りの「Macadelic」と、Larry Lovestein名義でジャズヴォーカルにチャレンジした5曲入りのEP的な作品があります。さて「Macadelic」がまた素晴らしいです。好みで言うと、めずらしくトラップな感じでカッコいい「Loud」、めちゃトリップホップぽくてカッコいい「Thoughts From A Balcony」、

 

同じくトリップホップっぽいけどこちらはゆったりとしたスモーキーな「Aliens Fighting Robots」、さらにゆったりとした感じのいい曲「Vitamins」、まろやかギターの半音下がりコード進行がクールオシャレなムードのいい曲「The Mourning After」、落ち着いた隙間のあるフェイザーコードと超ダルめなラップがいい感じの「The Question」、鼓のようなスネアの音がヤバカッコいい「Sunlight」、浮遊感たっぷりの極めて穏やかなムードのいい曲「Clarity」、そしてタイトルとは裏腹に感動的なラス曲「Fuck ‘Em All」が良かったです。名盤だー。あとこのアルバムは、ゲストに若手(当時は)のKendrick LamarやJoey Badassもいますが、大御所のJuicy J、Cam’ron、Lil Wayneもいるところが何だかおもしろいです。

 

13年も精力的です。スタジオセカンドアルバムの「Watching Movies With The Sound Off」、Larry Fisherman名義のトラック集「Run On Sentences Vol.1」、Delusional Thomas名義の変なトラックに変調した声のラップの意味不明なアルバムがあります。The Internetをバックバンドに従えてのライブ盤「Live From Space」もあります。DatPiffには、この編成での違うライブ盤もあります。曲はさすがにほぼ同じですけど、、、ノリまくってますね。

 

セカンドアルバムは、ファーストより全然いいです、好きです。この少し前からから、生まれ育ったピッツバーグからLAに引っ越したようです。いろんな訴訟やハードなツアーでカラカラになっていたところ、Odd FutureやTDEとの出会いもあって、サウンドの変化はこうして聴いていてもそんなに分かりませんが(ややスピリチュアル気味に落ち着いた感はあります、後付けですが)、歌詞が格段に変化、成長したようです。よかったですね。

 

さてアルバムは、Earl Sweatshirtもゲストの「I’m Not Real」は暗めな男ヴォイスキーボードの音が効果的な切実な雰囲気のトラックで感動的です。次のFlying Lotusプロデュースの「S.D.S」ではキーボードコードがぐわんぐわんベンドしてておもしろカッコいいトラックです。次のClams Casinoプロデュースの「Bird Call」はビット数粗そうなビートがテンション上がります。次のAb-Soulをゲストに迎えた「Matches」も、、、ヤバいですね、全曲いいんじゃないだろうか、、、

 

女ヴォイスキーボードが天国っぽくてすごくいい効果です。「I Am Who Am (Killin’ Time)」もゴーストのような女性コーラスのループでクールです。今回、声(およびシンセ声)が上手く使えてる感じです。The Alchemistプロデュースの「Red Dot Music」も声で、女性コーラスを更に高く変調しています。ラストにモノリス登場みたいなリゲティ音だけをバックにAction Bronson(なのか?)がラップをまくしたてて、すごいおもしろいです。

 

涅槃のような鳥っぽい音が旋回する「Watching Movies」は不気味不穏な雰囲気でカッコよくて、メロトロンコードだけでスタートして時々リズムが入ったり止まったりする「Suplexes Inside of Complexes and Duplexes」も、かなり独特なアイデアと雰囲気でイカれイカしてます。短く切っリズミカルたホーンのDiploプロデュース「Goosebumpz」も、ユニークな発想のトラックで(Diploらしい)、すごくおもしろいです。名曲ゴリ押しの名盤だと思います。

 

2014年はまず、CD分量だと2枚組の大作ミックステープ「Face」があります。これはバンドとのライブの感じを引き継いでいるような気がします。そして15年にスタジオサードアルバム「GO: OD AM」が出ます。音はすっかり落ち着いています。「100 Grandkids」はめっちゃいい曲です。続く「Time Flies」は奇妙なトラックに、なんとLil Bの奇妙なラップがあっておもしろいです。他には、ゲストがMiguelとかChief Keefとかおもしろい人選だと思います。16年「The Divine Feminine」ではサウンドは更に落ち着き、幸福感が漂っています。Ariana Grandeのおかげです。

 

そしてとうとう18年「Swimming」は、落ち着きを通り越して弱々しいです。恋人に捨てられ、失意のどん底で作られたこのアルバムは、前作と対照的にさびしくて重たい雰囲気ですが、曲は全部良くて才気走っていて、強烈なリアルを訴えてくる力があります。特筆すべきは、すっかりヘロヘロになった歌とラップの境界線はもはや消失してて、Drakeとか他のアーティストが頑張ってやってることを別角度から自然体で達成してしまっていることです。

 

曲もサウンドも歌詞、リリックも、すべてが非常に高いレベルにあると思います。細かい音の奇妙で不思議なアイデアも素晴らしいです。フォークのアルバムみたいです。アシッドフォークですらあります。最初から聴き始めて、最後の「So It Goes」ですっかり感動してしまいます。こんなに素晴らしくて感動的なのに、これが最後の作品なんて、あまりにも哀しいです。

 

ところが死後に「Circles」というアルバムが出て、よくある寄せ集め的なのじゃなく、ほぼ「Swimming」と対をなした作品で同時進行に制作されていて、作業はほとんど終わっていたし、仕上げはずっと一緒に作っていたプロデューサーがやった、てことで期待して聴いてみました。こっちは明るめの曲が多くて、音もバンドサウンドっぽい感じで、歌中心でラップはほとんどしていません。曲は相変わらず良くて、特にシングル「Good News」はあまりにもいい曲で、その曲調と歌詞も含めて何だか実に感動しました。

 

 

89位、THE WAR ON DRUGS「LOST IN THE DREAM」(2014年、HEARTLAND ROCK)、ジャンル名、なんかスゴいですね、、、自分もこういう音で育ったんで、おおー、とは思うし、ぐっとくる部分もあるんですが、やっぱりここまで徹底的だとまだ気恥ずかしさのほうが強いです。グッときても、オリジナルのほうを聴きたくなるだけですかね。
こういうものをやりたい気持ちは大いに分かるし、実際やって成功してたりすると羨ましく思う部分も多少あるんですが、たぶんやっても、やれてもつまんないだろうな、とも思います。

 

 

88位、PILE「DRIPPING」(2012年、POST-HARDCORE)、こういうのは、もう本当に、「〜みたいだなー」、としか思わないんです。まあ、あるジャンルが好きな人が他のジャンル聴くと、大体お互いそう思ってるとも思うんですが。
ずっと自分は、ミュージシャンっていうよりリスナーだなあ、て思っていた節もあるんですが、でもリスナーとしては、「同じようなものをずっと聴けない」、「完成度が高いものが苦手」、という決定的にダメな性質持っているので、良いリスナーでもないってことに気づきました、この歳になって。

 

 

 

87位、JEREMIH「LATE NIGHTS: THE ALBUM」(2015年、R&B)、この作品には驚きました。ここまで静かで音の少ないR&Bがあるのか、みたいな。じわーっと浸るサイケデリック感覚があり、なぜか近未来とノスタルジーまで喚起させてくれる感じがあります。ずっと現実と夢の中間を浮遊しているような感じです。1曲目の「Planez」のヒューっていうドローンシンセと極シンプルベース&リズムのトラックにいきなり連れ去られます。スゴいトラックだ、、、

 

続く「Pass Dat」も単音シンセとベースとリズムだけなんですが、結構キャッチーです。「Feel Like Phil」は静ガムランみたいな音と音階が、中毒性のあるすごい好みなトラックです。「Royalty」に至ってはもうベースとドラムだけだし(たまに単音高音エレピ)、「Action Up」はスカスカな上に音が小さくて驚きます、、、

 

このようにしてアルバム全体が驚くほど音が少なくて隙間が多いのに、空気は濃密です。これは、彼の歌とグルーヴだからできることですが、それにしてもここまで徹底的なコンセプトと実行が成功してるものって、他にないんじゃないだろうか、と思います。しかもすべての音がマイルドで気持ちいいという、、、この感じは、これでしか聴けないのです。そしてラストのクイーンのカバー!?かと思うような「Paradise」は、アコギだけです。完璧な作品です。

 

こんなすごいアルバムの前はどんなんだったんだろう?と思って、ほとんど全く別物扱いされている(本人がそう言ってる?)2009年の超売れたっぽいアルバム「JEREMIH」と10年の「All About You」を聴いてみました。どちらもLate Nightsに比べると雰囲気は相当違って元気でポップな感じですが、3歳からドラムをやってたせいか、リズムパターンと音がおもしろいです。パーカッション系とかおもしろい音で、かなりシンプルな変わったリズムが主体の曲が多いです。曲自体は全体キャッチーでスカスカして、なかなか中毒性があります。これはこれでかなりいいと思います。

 

「JEREMIH」は、1曲目「That Body」からそういうパーカッション音のエキゾチックなムードのスカスカトラックでカッコよくてキャッチーです。2曲目の「Birthday Sex」は大ヒットシングル、いいサビの曲です。「Runway」80sダサめなポップス曲。どことなくユーリズミックスを思い出します。「Starting All Over」、「Hatin’ On Me」みたいなしっとり曲もあります。だからといってやはりLate Nightとはかなり違いますが、、、「Jumpin」はシンセタムのリズムパターンが気持ちよくてしっかりオートチューンなキャッチー曲。一瞬Daft Punk「Bush Eye」もかなりパーカッション曲です。

 

セカンドの「All About You」のほうは、泡シンセなオープニング「All About You(Intro)」からおもしろい、いい曲です。続く2曲目「X’s & O’s」は、高音ピアノアルペジオがちょっと凝った切なめな落ち着いたいい曲です。早い高音エレピフレーズとどっしりしたフロアタム連打のリズムのカッコいい曲です。雰囲気は落ち着いています。50 Centがゲストで意外。

 

次の「Take Offも落ち着いたムードで、ストリングス音にゲートリヴァーブバスドラがおもしろい曲。Ludacrisゲストの「I Like」は、これまた奇妙なリズム音のスカスカポップ曲。「Broken Down」はLate Nightsの感じに近いスペイシースロー曲です。「Holding On」はさらに落ち着いたムードで、ちょっと歌い上げる感じ、、、というようにセカンドはファーストに比べると、全体かなり落ち着いています。リズムの音数は少ないんですが、音色とかよく聴くといちいちかなり異色な気がします。

 

その2年後に、同じタイトルの「Late Night」ミックステープが出てます。ここからですね、新生Jeremih。先に売れたスタジオ盤が2枚出てて、その後ミクステっていうのは普通と逆ですね。普通は、ミックステープで腕を磨いて知名度を上げてスタジオ盤へ、ていう流れみたいだから、、、で、こっちのLate Nightsは、これはこれでかなりThe AlbumのほうのLate Nightsと違って意外でした。

 

DJ DramaとDJ Pharris、そしてMike Will Made Itなど多数のプロデューサー達とやりたい放題に色々試してる感じで、めちゃめちゃおもしろいです!Gucci Maneと2 Chainz参加して延々ダラダラしてる(トラックはカッコいい)「Outta Control」とか、普通にメロウポップなYGとE40が参加の「Knockin」とかもあります。これはかなり傑作ミクステだと思います。Pitchforkの企画のベストミックステープ50に入るべきだったと思います。

 

他にも、「Fuck U All The Time」とか「Ahh Shit」とか「Laa Over Me」、「Go To The Mo」、「773 Love」、「Keep It Moving」もいい曲だし、「Rated R」や「Feel The Bass」はThe AlbumのほうのLate Nights(ややこしいな)に入っててもおかしくないような曲でした。

そして2015年にこのThe AlbumのほうのLate Nightsが出て、次の年にはもう「Late Nights: Europe」が出ます。いちおうこれで3部作ということみたいですが、、、

 

内容は当然、前作の音を引き継いでいますが、どことなくダークトラップな風情もあります。これもかなりいい作品です。

そして、Chance The Rapperとのコラボ「Merry Christmas Lil’ Mama」をクリスマスに2年続けて出します。これはどっちかというと、Chance The Rapperの色のほうが強くて、明るくスピリチュアルな内容です。これもいい作品でした。現在のところ最新作は、18年のTy Dolla $ignとのコラボ「MIHTY」みたいです。これもまたどっちかというとTy Dollaの色のほうが強いかな、と思いました。

 

 

86位、FKA TWIGS「LP 1」(2014年、ALTERNATIVE R&B)、これもかなり驚きました。スカスカした奇妙なアレンジに響く歌声と楽曲のオリジナリティは、なかなかキョーレツで斬新でした。1曲目の出だしがいいですよね、試し発声みたいなところから突然ブルガリアンヴォイスみたいなコーラスが始まってエレクトロなリズムが入ってきてっていう、、、突然変異っぽいけど、もちろん完全に新しいわけではなくサウンドも歌もジャケの自分のトリッキーなキャラ化もビョークを連想するし、歌は時々ケイト・ブッシュも連想します。

 

ビョークやケイト・ブッシュとの1番の違いはR&B要素かな、と。自分がおもしろいなと思ったのはこんなに独特な印象なのに、トラックはArcaやDevonté Hynes、Clams Casinoや他有名プロデューサー達による音なんですよね。この全部自分に引き寄せての統一感はスゴいなあ、と思います。発表する全部の曲に映像がついているっていうのも変わってるなあ、と思います。そういえば、YouTubeでメキシコの村の廃墟みたいなところでの「Hide」という曲の演奏のやつを見ましたが、スタンディングシンセドラム2人(片方がパッドを叩いてベース音を出していた)とエレキギターだけのシンプルな編成で、何だか妙に感心したのでした。

 

これが衝撃のアルバムデビューですが、その前に2012年「EP1」、13年「EP2」があります。タイトルの通りどちらも4曲入りのEPです。いきなりこういう音楽だったのか興味深いところなので聴いてみます。まずはEP1、よりトリップホップさがあります。ウィスパートリップホップ。極限まで音を削ったような静謐さは、既に獲得してていいですねー、、、そしてEP2、Arcaがプロデュースです。

 

1曲目「How’s That」前作の音とそんなに変わらないかなー、と思ってたらいきなり古いメトロノームみたいな音が入ってきたりして、さすがに奇抜です。2曲目「Papi Pacify」はこれも意外にもエレキギター主体でちょっとバンドっぽくなる瞬間も。3曲目「Water Me」は終始ぼんやりした、かなり実験的なトラックでした。とてもおもしろかったです。そして今回取り上げられてたLP1が出て、その次はまたEP「M3LL155X」が出ます。「EP3」じゃありませんでした。5曲入りです。タイトルは「Mellissa」と呼ぶみたいです。全体的にサウンド、歌、実験性を強めているような感じで、5曲でもじゅうぶん聴き終わると、ふーってなる感じでした。かなりの力作EPです。

 

ここまでは毎年EPかLPを出していましたが、ここからは4年たって2019年に超力作セカンドアルバム「Magdalene」が出ます。新約聖書に出てくる、誤解されて悪者扱いされるMagdaleneさんと自分を重ねて物語が展開するという大作志向の作品で、サウンドも歌も大作っぽくなっています、、、が特筆すべきはメロディが独特なままキャッチーにもなっているところです。てことは、ますますビョークかケイト・ブッシュぽくなるっていうところもあるんですが、それを置いても相当な力量でエネルギーを注いだ作品になっていると思います。

 

プロデュース陣も、Nicolas JaarやSkrillex、Benny Blancoなどが並びます。Daniel Lopatinもいます。1曲ゲストラッパーがいて、なんとFutureです!、、、て具合に、曲はいい上に実験性を失わないままスケールが壮大になって、歌も色んな局面を見せ、そして例によって、全曲じゃないけど映像のほうも自己プロデュースで数曲ついいてて、まさに全局面で完璧な名盤になっています。

 

 

85位、WILEY「ZIP FILES」(2010年、ジャンル名表記無し)、ジャンルはまあ、Grimeですよね、Godfatherですもんね。自分はこれだけ今だに聴けてないです。成り立ちを考えるともう聴けないのかな、と思うし(YouTubeで一部聴ける)、今聴く意味もないのかな(ちゃんと作品たちがリリースされているから)、とも思いますが、、、

 

これはさすがに説明読んでレコ屋にはないって分かったので、当時は「Godfather」のCDを買いました。「ZIP FILES」の7年後に出たアルバムです。
グライム、若干苦手意識あるんですが、テンポが速いのと技巧が目立つ感じがちょっとキツいというか、、、このアルバムもそういう印象でしたが、04年のファースト「Treddin’ On Thin Ice」を聴いたらめちゃめちゃ良かったです!めずらしくDatPiffにあった、06年の「Tunnel Vision Vol.1」もかなり好きでした!

 

 

 

84位、NICKI MINAJ「THE PINKPRINT」(2014年、HIP HOP)、このアルバムは名盤だと思います。その後で色々知る彼女のイメージにおいても、これは異質な感じです。暗いんですよね、なんか。シリアスとも言えますけど。だからってわけじゃないけど、前2作より全然好きです。とにかく内容がいい、全曲いいと言いたいぐらい。Deluxe盤のボーナストラックまでめちゃいいんです。でもこの後から出るDeluxeバージョン文化、結構CDを買う人を減らしたんじゃないか、と思います。自分は、このアルバムはまず普通にCDを買ったんで、損した気になるんですよね、、、

 

で、このアルバム、まず冒頭「All Things Go」から落ち着いた冷ややかな感じで、バスドラの音にやられます。カッコいい、、、続く「I Lied」も同じような雰囲気のいい曲です。3曲目「The Crying Game」では、Jessie Wareという意外なゲストを迎えて、変な中近東っぽい弦楽器の音のひら歌から、サビでエレキギターの速いエイトビートの刻みがくるというアイデアのキャッチーな曲。「Get On Your Knees」ではAriana Grande、「Feeling Myself」ではBeyoncéとえらい豪華なゲスト、「Four Door Aventador」は理屈抜きで好きな曲です。めちゃいい曲だと思います。次の坂本龍一チックな「Favorite」もいいです。「Anaconda」も大好きな曲です。ヒップホップ初期の自由なフィーリングの遊び心を感じさせてくれます。

 

「The Night Is Still Young」は、自分にはほとんどニューウェーブロックに聴こえます。「Pills and Potion」もバリバリにキャッチーないい曲です。本編よりむしろいい、とまで言われている(誰に?)ボーナストラックでは、「Wamables」が最高好きです。このように色んなタイプの良曲にNicki Minajさん、違和感なく上手く乗っかります。ラップは当然ですが、歌もかなりいいです。こうしてバラエティに富んだ大量の曲達が統一感あるように感じられます。すごい能力、すごい人です。そして、すごいアルバムです。

 

このアルバムがサードなんですが、スタジオ盤の前に3つのミックステープがあります。まずは2007年「Playtime’s Over」、ラスト曲の「encore 07」(これ曲名なのか?)が1番好きでした。続いて08年「Sucka Free」で内容が格段に上がります。「Grindin」は音もリズムパターンもカッコよくて「Curious George」はミヨミヨシンセポップなトラックで良かった。「Cuchi Shop」はかわいらしい、いい曲、「Young Money Ballaz」はキャッチーでおもしろいトラック、「Dead Wrong」もおもしろいトラックで、リムショット中心のリズムが良かったです。

 

勢い最高潮で09年に「Beam Me Up Scotty」が出ます。DJ Holidayプロデュース、Gucci Maneが3曲、Lil Wayneが2曲参加しています。彼女のラストミックステープであり、正にミクステクラシックな内容です。曲の良さも量もラップもすべてがノリにノッてる感じで楽しいです。今年になって、5曲入れ替えて再発されています。この5曲がまた最高で、ただでさえクラシックなミクステが、モアクラシックなミクステになっちゃっています。日本語が時々聴こえるカッコいい「Handstand」が消えたのは少々残念ですが、、、

 

そして2010年、いよいよメジャー盤デビュー「Pink Friday」です。かなり売る気満々な感じ、セルアウトとでもいうか、、、ちょっとポップステンション高くて自分はあまり好きじゃなかったです。後にデラックスが出て7曲もテンション高めのラップ曲が追加されてますが、それもあまりノレず。結局本編の「Did It On’em」だけすごい好きでした。

 

12年にセカンド「Pink Friday: Roman Reloaded」が出ます。余談ですが自分は最初コレがファーストのデラックス盤だと思ってたんですよね。でも曲が全然被ってなくて、デラックス盤の新しい形!?とか思ったりしました、そんなわけないっつーの、、、ちなみにセカンドは後に「Pink Friday: Roman Reloaded – The Re-Up」ってのが出ます。非常にややこしいです、、、

 

セカンドは、ファーストのボーナストラックの勢いを引き継いでいる感じです。「Beez In The Trap」、こういうの好きなんですよね、、、後半にいくにつれて曲調がなんかどんどん軽薄な感じになっていって、ふと「誰のアルバム聴いてるんだっけな?」と思ったぐらいです。でもこのセカンドもファーストも売れまくったんで、まあ本人は満足なのかな、と。

 

満足じゃなかったのか、この次に暗めな最高の「The Pinkprint」が出て、そこから4年もあいて18年に「Queen」が出ます。ジャケがエグい系です。原宿バービーちゃんから比べるとアマゾネスぐらいの、、、内容も堂々とハードめなラップとトラックが並びます。1曲目「Ganjan Burn」からエレキギターリフとトライバルなビートがカッコいいです。2曲目「Majesty」はエミネム登場で、ラップやりすぎててなんか笑えます。次の「Barbie Dreams」ではMinajがラップスゴいです。

 

「Run & Hide」は逆回転音が静かに重低音ベースと共にうねる美しい曲で、かなりいいです。

続く「Chun Swae」も似た雰囲気ですが、Swae Leeの少し変な歌い方が怪しさ倍増させてていいです。個人的には、「LLC」はアルバムのベストトラックです。Minajお得意のスカスカしたキャッチー&不協和音のトラックに、自由にラップしまくってる感じでカッコいいです。ラストの「Coco Chanel」では古株(Minajのアイドル?)Foxy Brownと共に、ひたすらハードに攻めて終わります。

 

こうして10年間の音楽を聴いていくと、やはり音のおもしろさ、新しさ、楽しさ、スゴさはロックよりヒップホップのほうが全然あると思います。下手したらメロディも、、、自分の保守的な耳を安心させるフォークやジャズもありますが、いやジャズで新しさがないものは聴かないか、、、まだ83位ですが、、、

 

 

83位、SHEER MAG「NEED TO FEEL YOUR LOVE」(2017年、POWER POP)、パンクも細かいジャンル分けありますよね、自分にとってパンクと言えば70年代のロンドンパンクとNYパンクなんですが、ユニオンだとそのへんはむしろパンクコーナーの隅っこ暮らしな感じです、、、さて、そんな僕にもSHEER MAG、曲に泣き、プレイに泣き、見た目に泣き、そしてアルバムタイトルに泣きました。奇跡のバンドじゃないでしょうか、最高です。このファーストの前に出てたEPたちをまとめた「Compilation」も最高です。

 

 

82位、DARKSIDE「PSHYCHIC」「2013年」(ART POP)、これはフツーに、昔のプログレじゃないかな、と。サイケ埋もれた名盤、みたいな。時代を先取りした、と書かれてあるけど、マジで!?時代を逆行してんじゃなくて!?って思っちゃいました。ニコラス・ジャーのソロを聴いても同じような印象でした。好きか嫌いかで言うと、別に好きじゃなかったです。

 

 

81位、HOLLY HERNDON「PLATFORM」(2015年、ART POP)、これもかなりぶっ飛び最高の内容でした。自らの目的のある複雑な手法を色々なメディアで語ったり、創作自体は完全に実験と研究のための現代音楽、実験音楽なんですが、音を聴くとその異常な独特性の編集センスとポップセンスに驚愕しています。1曲目「Interference」から、飛び交う女性の声たちが4つ打ちクラブトラック乗っかるすごい曲です。自分はもうこの1曲でノックアウトされました。

 

続く先行シングルだった「Chorus」も同じような感じで、男女混合の声に物音がコラージュされてすごい世界ですが、なぜかクラブトラック風にもなっててめちゃめちゃカッコいいです。ハーバートやマトモスっぽいとも言えるんですが、それよりもっとインサイドっぽいし狂っていると思います。

 

さらに声もコラージュ音も増え無国籍祝祭感な「Unequal」や、キャッチーなエレコトロニカ歌ものな「Morning Sun」、そして完全に実験音楽寄りの、喋りと物音コラージュだけが延々と続く「Lonely At The Top」など、曲ごとのバリエーションも豊富です。「TAO」はコラージュ的にもリズムプログラミング的にも1番ハードなトラックです。

 

アルバム全体で共通(テーマ?)なのは、とにかく声、声、声、と物音、物音、物音、です。クラブ仕様になっていようがスペーシーになっていようが、近未来のどこかの誰かの部屋にいるような感覚です。彼女のインタビューや映像、ブログなどで理屈を理解するのも楽しいですが、すべて謎なまま謎な音楽として聴くのもとても楽しいと思います。とにかくすごいアルバムだと思います。これがセカンドアルバムってことで、2012年のファースト「Movement」も聴いてみました。

 

声のコラージュとクラブトラックの融合の独特な感じは既にあって、物音コラージュがまだそんなにないせいか、音に隙間が空く時はかなり大胆に空いています。そのため、能のように感じられる瞬間もあり、武満徹の大傑作曲「ヴォーカリズムA・I」を思い出す瞬間もあります。

 

1曲目の「Terminal」は、周期的にブーンと迫る低音とノイズに小刻みチョップ声がパーカッシブに入ってくる、ターミネーターのオープニングみたいな雰囲気です。次の「Fade」はかなりクラブトラックよりで、その次の「Breath」とラストの「Dilato」が、その隙間だらけの声トラックです。アルバムタイトル曲の「Movement」は、その前のちょっとOvalみたいな曲「Control And 」の流れで始まり、次第にトライバルな感じになって細かい展開があって、最終的にはレイヴとかで流れたら感動的なトラックになっています。これがデビュー盤と考えると、なかなかの大型新人感があると思います。

 

次作であり今のところ最新作の19年「PLOTO」は、AIとのコラボというなかなかぶっ飛び企画なんですが、AIが整えてくれるせいか、意外と曲が分かりやすくて聴きやすいものになっています。JLINとのコラボ「Godmother」が1番アバンギャルドかもしれない、てぐらいに。「Frontier」はソロアカペラがエフェクトと変調により一大合唱になり、リズムも入ってきてAKIRAか攻殻機動隊のクラブリミックスのような壮大な感じになる目玉曲です。これとは逆に「Fear, Uncertainty, Doubt」は、ソロアカペラがソロヴォイスのまま変調、エコーエフェクトされてキラキラとした美しいものになっていて感動です。

 

「Live Training」と副題がついた2曲、「Canaan」と「Evening Shade」も、素の音があえてまだ判別できるようになっていて、これも美しい感動的なトラックです。台詞や会話中心の「Extreme Love」や「Bridge」も興味深いです。
このように声に焦点を当てて実験し続ける彼女の活動と作品は、本当に素晴らしいと思います。次の作品もとても楽しみです。

 

 

80位、TOTAL CONTROL「HENGE BEAT」(2011年、POST PUNK)、出だしは、うわ、もろスーサイドじゃん、と思いましたが、その後は色々な今風の(でもないか)要素が混合してて、でも結局何だろうなー、て印象でした。時々、「気持ちわかります!」って部分もありました。

 

 

79位、GUCCI MANE「WORLD WAR 3」(2013年、ジャンル名表記無し)、何でジャンル表記ないんだろう、、、ジャンルは「Gucci Mane」ってことですかね、、、ここでフィジカル無しの洗礼を受けました、探してもあるはずない。ネットでフリーダウンロードできる、、、人生変わりました。この作品、内容も最高で3枚セットなんですよね。しかもこれが出た年は、他にもアルバムをバンバン出してるっていう、、、その間に刑務所とか入ってるし、、、

 

衝撃を受けてばかりのこのVICE記事の中でも、この人は最大の出会いでした。音そのものやラップのスタイル、そして驚愕のリリースペース。アルバム、100枚以上あるんじゃないか、、、1年以上たった現在でも、まだ全部は聴けてません。作品の内容だけじゃなく活動そのものが、シーンはおろかシーン外にも多大な影響を与えているんじゃないでしょうか。ヒップホップの歴史の中でもトップクラスの偉人、奇人だと思います。前にこの人のアルバムほぼ全聴き文を書きましたが、再チャレンジしないといけないと思っています。

 

 

78位、PARQUET COURTS「LIGHT UP GOLD」(2011年、GARAGE ROCK)、ガレージというより、普通のややパンクバンドサウンドです。結構幅広い音楽性を演って、いいツボをおさえてる、みたいな。本当にどうでもいいことですが、1曲、ストリート・スライダーズを思い出しました。

 

 

77位、TURNSTILE「NONSTOP FEELING」(2015年、HARDCORE PUNK)、どストレート正統派って感じです。ちょっとビースティー・ボーイズのハードコア曲を思い出しました。これはあまり興味ないかな、、、と思ってたらちょうど新譜「Glow On」が出たんで聴いてみました。モノクロームセットなギターポップ曲やスローな曲など予想外のバラエティと幅広い演奏力の、結構、圧倒的なロックアルバムでした。すごい成長、展開です。

 

 

76位、KELELA「TAKE ME APART」(2017年、ALTERNATIVE R&B)、最初聴いた時は、完成度高すぎて落ち着きもあったせいか、そんな特別に感じなかったんですが、これがデビュースタジオ盤ということで、ちょっとその前から聴いてみたら印象が変わるかもしれない、と思って、2013年のミックステープデビュー(出た時はフリーだったみたいです)の「Cut 4 Me」から聴いてみました。そしたら1曲目「Guns & Synths」からカッコよくて、乾いたシンセのイントロからガラッと変わる瞬間に歌も入ってくるとこにグッときました。いいトラックだー。

 

続く「Enemy」もかなりカッコよくて、攻撃的なスティールパンリフがいいです。歌もちょい攻め気味。「Floor Show」は少しゆったりオリエンタルムードなキャッチー曲。「Do It Again」はミステリアスシンセ反復フレーズからリズムが入ってくる間もずっと抑えめに歌い上げてて、トラックと一緒にワンランク押し上げている感じです。全体的に彼女はパワープレイやモロ技術でトラックを征服するのではなく、冷たい雰囲気の先鋭的なトラックが多いですが、あくまでも寄り添って共存してセンスと批評性で曲の価値を上げているようなスゴさがあります。トラック群は本当におもしろくて、「Bank Head」もリズムと歌の平行せめぎ合いみたいな感じです。

 

アルバムタイトル曲「Cut 4 Me」はもうメインシンセリフがキャッチーな名曲です。先鋭的なプロデューサー揃いのせいか、このように全曲トラックもよくて曲ごとに全然違うアプローチがあって、前衛的なロックやフォークのヴォーカルミュージシャンがアルバム1枚かけてやるようなことを曲単位で次から次へとやってのけています。これはかなり名盤ミクステなんじゃないでしょうか。

 

次の15年「Hallucinogen EP」は、更に実験を進めている印象です。冒頭の「A Message」から、Arcaのワケわからないバスドラ連打トラックがイカしてます。トラックが攻めてますが歌のせいで妙に不気味に静かな印象です。「Rewind」のトラップR&Bの「Rewind」も静かに迫り来るカッコ良さがあります、、、ていうかカッコいいです。「All The Way Down」の速く流動するシンセもいいです。タイトル曲「Hallucinogen」も変なエグい曲だな、と思ってたら、コレもArcaでした。流石ですね。ラストの「The High」はそれらを受けて一層ゆっくり静かで、でもエモーショナルで感動的です。6曲なのに、アルバム1枚聴いた感があります。これまた名盤じゃないですかね!

 

そしてやっと「TAKE ME APART」に向かいます。この流れで聴くと自分の感じ方が変わるかな?、と思って5回ぐらい繰り返し聴きました。やはり非常に完成度が高い作品です。細かく工夫や処理が施されているので、5回目に気づいたところもあります。プロデューサー陣は今までの面子で総力戦といった感じです。

 

でもやはり、あまり好きではなかったです。何度も聴けるし嫌じゃないけど、聴いて何かが残るかと言えば特に何も引っかからないんですよね。前回までは先鋭的なトラックに彼女の歌が見事に溶け込んで共存して高めあって、曲もいい、て感じだったんですけど、今回はすねての努力や実験、工夫が歌に収束しているというか、スリル無しというか、、、何だか少しさびしいので、「Take Me a-Part, the Remixes」という20曲ヴォリュームたっぷりのリミックス集も聴いてみました。リミックスのほうがオリジナルより先鋭性がなくて、レトロでレイドバックしてるっていう、、、Etherealの「Jupiter」とNídiaの「Blue Light」、Gaika「Frontline」、Anya Simone「Enough」が良かったです。

 

新しいアルバムは出てませんが、2019年にWarp30周年記念として、Asmaraと一緒にDJミックスに歌をのせた「Aquaphoria」があります。Susumu Yokota、Autechre、Aphex Twin、Oneohtrix Point Never、Jaco PastoriusにKelelaがヴォイスを乗せています。全体的にアンビエントで50分ちょいあって、なかなかいいです。SoundCloudで聴けます。

 

 

75位、LCD SOUNDSYSTEM「THIS IS HAPPENING」(2010年、DANCE PUNK)、ジャンル名がダンスパンク?!、、、随分とレトロなサウンドだなあって思って、自分が好きで聴いてたものがあちこちに散らばってる感じで、、、それを非常に上手く再現してるって感じですかね、、、「I Wanted A Bit」は、いい曲だなあって思いました。
たぶんコンセプトにも関係してるんだと思うんですが、コンピっぽい作りで、でも全部同じバンドやん、っていう。ロックファンなら誰もがやってみたいなあーって思ってることを完璧な形で再現してるんじゃないか、と思いました!

 

 

74位、100S「ICE COLD PERM」(2010年、ジャンル表記無し)、最初は聴いてもそんなに特別なものを感じなかったんですが、メロディが混ざるラップもフューチャーGファンク混ざるトラップっぽい感じも、どちらもありそうでない感じがクセになってきて、この作品はデビュー盤でそれ以降のやつも聴いてみたんですが、どんどんナルシズムが肥大化して音的にもおもしろくなっていました。でも確かにこのアルバムだけは、今だに聴いてて不思議な感じがします。

 

 

73位、JAMES BLAKE「JAMES BLAKE」(2011年、ART POP)、ここでようやく、この記事を読む前からCD持ってたやつがきました。この人は完全に天才くんですね。最初に書くのも何ですが、アルバムはこれが1番いいです。このアルバムはスゴいです。初めて聴いた時はかなり驚きました。

 

しかし、このすごいファーストアルバムの前に出ていたシングルやEPが更にスゴいんです。まず2009年の2曲シングル「Air & Lack Thereof」は、サンプリング歌部分ループJ Dillaスタイルにハデめなビートとシンセをかましてる小手調べ的なものですが、既に何種類か複合してるような独特な感じとキャッチーさがあります。続く10年に3曲入りの「The Bells Sketch」、3曲ともスゴいです。こんな音楽、、、何か違うものが同時にかかっているような、頭が絡まったものが現実に出現した感じというか、、、鬼気迫るものを感じます。こんなものどうやって生み出したんだろう、、、

 

続いて4曲入りの「CMYK」、同じように新しいものをクリエイトしています。古いものと新しいもの、明瞭なものと不明瞭なもの、サンプリングとオリジナルのものが交錯します。ごちゃごちゃ言ってますが結局、出来上がったトラックはとてもいい曲で感動があります。うーん、スゴい、、、同じく10年に、また4曲入りの「Klavierwerke」が出ます。CMYKと同じ手法ながら今度はサンプリングじゃなく、自分の声とピアノ(ずっとクラシックピアノを習っていたらしい)を使います。声のピッチシフト表現が効果的です。結果、かなり内省的な印象を持つ、風変わりな音楽になっています。

 

こうした流れので、いよいよファーストフルアルバムの「James Blake」になるわけです。デビューですが、決して今までの総括ではありません。更に変化しています。最大の追加はやはりメロディのある歌です。もちろん、これを初めて聴いた時に真っ先に衝撃を受けたドラムプログラミングも、ダブステップ特有のうごめく低音も健在です。攻めまくっています。

 

しかし、今までサンプリングや断片をエディットしていた声の部分が、本人のピアノ弾き語りになっていて、結果的に本人のシリアスで根暗な部分がかなり表出したことにより、全体的に陰鬱なムードになっています。先鋭的な手法と細かいエディットサウンドが、達者なピアノと作曲、持って恵まれた高音クリアヴォイスと静かにバチバチとぶつかって、世にも稀な作品が出来上がった感じです。正に名盤!

 

自分が持っていたCDは日本盤だったんですが、よく見るとなんとボーナス2曲がアルバムの最初と最後にきていて、最後はいいけど最初はいかんだろ!と憤っていたら、デラックス盤だとディスク1はこの日本盤と同じでした。で、ディスク2は「Enough Thunder EP」として別売りもアリな盤です。少しややこしい、、、

 

この、ダブステップ歌もの名盤という偉業を成し遂げたものの、すかさず同年に「Love What Happened Here」という3曲入りEPを発表します。忙しいですね!この3曲、なんと今までの彼のどの曲にも似てません!ファーストアルバムの前に既に存在していたらしいタイトルトラックは、珍しく明るい曲調のキーボードインストで、すごくいい曲です。残りの「At Birth」は4つ打ちハウスで、「Curbside」は、Pierre Bastienみたいなトランペットが鳴り、酔って遊んでるようなドラムのよく分からない曲です、、、いやー、引き出し多いな、、、

 

これでどうなるかと思ったセカンドアルバム「Overgrown」は、ファーストアルバムのほうの方向で、更に歌とピアノに傾いています。そして一層陰鬱にもなっていて、たとえRZAやBrian Enoが参加しててもあまり影響がありません。歌は一層ナルシズムを発散していて、ちょっと苦手な感じに、、、全体、何だかRadiohead感があります。しかし翌年に発表した「200 Press」は、12インチと7インチの変則EPでその名の通り200枚限定プレス(即日売り切れたそうです)。内容はちょっとワケが分からないディープハウスって感じで、かなり攻めています。流石というか、、、

 

半分近くをRick Rubinと作った2016年のサードアルバム「The Colour In Anything」では、曲調がやや明るくなり17曲もありながらバラエティがあって、サウンドも色々工夫がなされてますが、自分にはあまり感動がなくなってしまいました。アルバムだとやはり手堅い印象がかなりあります。

 

2019年「Assume Form」は、やや明るく穏やかな印象になります。Travis ScottやRosalia、André 3000などがゲストの曲は案外トラックがいいです。James Blakeじゃなく知らない人のアルバムって思って聴くと、いいアルバムかもしれません。

日本盤ボーナストラックの「If The Car Beside You Moves Ahead」だけ、男女ヴォーカルがCD音飛び処理がなされてて異様です。これは非常に尖った部分の彼らしい感じがしました。この後、20年に4曲入りEP「Before」が出ますが、すっかり「普通にいい曲、トラック作る人」みたいな感じです。同時期にシングルで出てた「You’re Too Precious」と「Are You Even Real?」は、どっちもかなりいい曲でした。すっかりEPのほうがおもしろいってパターンに、、、

 

これでいいんだろうな、と思います。尖りまくっていた早熟天才児(まだ全然若いんですが)は、自分の才能をうまく使い、コンスタントに良作を作り続けています。理想的かもしれません。そのうちもしかしたら現存するロックレジェンドたち、ボブ・ディラン、ニール・ヤング、ポール・マッカートニーのように、誰もが疑問に思うイレギュラーな作品も届けてくれるかもしれません。そのポテンシャルは充分持っています。

 

そうこうしている間に新譜が出ました。「Friends That Break Your Heart」です。すっかり普通路線を更新しており、バラードタイプのシンギングが増え、枯れすら感じさせます(早っ!)。すっかりただの歌の上手いおじさん、みたいな、、、もはや初期の異形のクラブトラックスや、今聴いても尚斬新なファーストアルバムを作った天才はここにいません。それでも彼は作り続けて、リリースし続けるでしょう。こちらもそれらを聴き続けるでしょう。

 

 

72位、YOB「ATMA」(2011年、DOOM METAL)、ほぼ聴かないジャンルで、ダークでヘヴィーで病的なイメージがあります。そういえば、日本語でとにかくメタルに特化してアルバムライナーを書いてるブログを見たんですが、テンション高くマナーが多くて造語の嵐で、それはめちゃくちゃおもしろかったです。

 

 

 

71位、PJ HARVEY「LET ENGLAND SHAKE」(2011年、ALTERNATIVE ROCK)、実は昔、この人の初来日のライブ行きました。当時、インディーからファーストの「Dry」が出て、結構いいバンドサウンドだな、と思ってたらアルビニ先生録音のセカンド「Rid of Me」が出て、1曲目の静から動に行くところでガツーン!と、、、ライブは渋谷クアトロだっけな、真っ赤なドレスワンピースでステージに登場した時は「おおっ!」って思ったし、アルバムを聴いていた通り、ファズかかったフレットレスベースとタムタム中心の野生的なドラムの屈強リズム隊を従えてて、最強トリオだなー、と思いました。

20年前か、、、たぶん、サードの「To Bring You My Love」でサウンドがガラッと変わって、興味を失ったまま現在に至る、と。まあ今思えば偏屈で浅はかなリスナーだったわけですね。

 

まずその頃の感じを思い出そうと「Dry」から、、、おお、今聴いてもなかなかカッコいい気がする、、、聴いていると曲を思い出します。しかしこれ、ミニアルバムぐらいのサイズだと思ってたけど、こんなに充実した内容だっけな、、、今は更にアルバム全曲分のアコースティックギター・デモバージョンも聴けるんですね、すごい時代だ、、、このデモ曲達だけでオルタナフォーク名盤になるんじゃないか、とか思いました。いやー、いいアルバムでした。「Rid of Me」のほうが、今聴くとあまりグッと来ませんでした。例の静から動に爆発するとこも何だか、、、

 

サウンドも演奏も歌も、全体気合が入りすぎて今の自分にはちょっときつかったです。それで、鬼門だった「To Bring You〜」は今聴くとどう思うんだろう?、と思いましたが、やはり色々やりすぎてあまり好きじゃなかった、、、しかしなんと!これも全曲デモ集があるのです!なんてことだ、、、どうやら去年から各アルバムごとにやってるプロジェクトのようです(Rid of Meはまだ?ありません)、、、これで苦手だったアルバムを克服できるかもしれない、、、なんでそこまでして、、、とも思うんですが、ステージの彼女の赤衣装に少しでもドキっとした、あの時の青い自分に対する義務というかけじめというか(意味不明)、、、と思ってたら、全然アコギ主体じゃない音でした。なーんだ、、、

 

でも、もうちょい行ってみようってことで、4枚目のアルバム「Is This Desire?」へ、、、特に好きじゃなかったです。ということで、いよいよこの「Let England Shake」に行きます。1曲目で思わず「スジバンじゃん!」と思ってしまいました、歌も曲調も。あ、スジバンとは、スージー&ザ・バンシーズのことです。長い名前なので、ファンはこう呼ぶのです。

 

デビューアルバムから考えると、もう19年たってて、アルバムも8枚目だけあってか、ソングライティングもアレンジも、そしてどうやら歌詞も幅広く上達していることが分かります。サンプリングまで上手いこと使っています。決して上から目線で言ってるのではなく、本当にそう思って感心しているのです。というわけで、確かにいいアルバムですが自分は今回知った「Dry – Demos」がベストです。

 

 

70位、STORMZY「GANG SIGNS & PRAYER」(2017年、GRIME)、UK音楽史上最も売れたアルバムとして、グライムを世に広めた最大功労者であり、グライムキングでもあるStormzy、アーティストとしても政治的発言や黒人学生援助のためのストームジー奨学金制度の設立、ブラック・ブリティッシュ・マイノリティの教育を支援する団体にThe Black Heart Foundationに50万ポンド(約7000万円)の寄付、などカルチャーのリーダーぶりも発揮、、、

 

てなことは、後付け知識ですが、まずは2013年の唯一のミックステープ「168 The Mixtape」を聴いてみます。既にラップは出来上がっていて、16曲の曲調バラエティが聴けます。「Lay You Down」は、バスドラの変な間隔のドン、ドンて音と遠くで鳴っているフェイザー音みたいなのだけでラップをしていたり、「Wherever You Will Go」はほぼピアノ伴奏とアツいラップだけだったり、自信あるチャレンジがあります。「Princess & The Bandit」では何と戦メリが!、、、「Game Over Outro」がカッコいい曲でした。かなりいいミクステです。

 

翌年リリースした「Dreamers Disease」はコンセプチュアルなのか、逆に曲数(7曲)も曲調も絞られています。メロウで寂しげなトラックが多く、ゲスト割合も高いです。

そしていよいよのデビュー盤にして売れまくったこの「Gang Signs & Prayer」になるわけです。リリースだけ見ると最短を走ったように感じますが、最初のミクステからここまで4年もたっています。それだけに、かこのアルバムに詰め込まれた曲たちの完成度や構成度は高く、かなり名盤然とした作品です。

 

実際、冒頭の嵐(Storm)の音からのカッコいい速いキーボードイントロから入る「First Things First」から全開で、続く「Cold」も前のめりなリズムとキレキレラップで畳みかけます。3曲目のJ Hus参加の「Bad Boys」も前のめりボコボコバスドラがカッコよく、既に聴いてて心はイケイケでダークでストイックで運命的なムードに支配されます。アルバムが売れるきっかけにもなったと思われる、爆発的ヒット先行シングル「Big For Your Boots」は、テンポ速めのスーパーイケイケラップがシビれます。いちいちカッコいいです、、、

 

「Velvet / Jenny Francis Interlude」は、ピッチ上げ女性ヴォーカルと美しいシンセコードで感動的です。インタールードと言っときながら、5分39秒もあります。「Blinded By Your Grace Part 2」も無闇に感動的ですが、エレキギターがちょっとクサいです。いちいち曲名が長いですね、、、NHKっぽいキャッチーなキーボードリフが何ともいえない印象の「Shut Up」、こーゆーの大好きだなあ、、、いい曲です。ラストの深い悲しみを帯びた「Lay Me Bare」まで、ほぼ完璧な歴史に残るようなデビューアルバムでした。

 

最初からこんなん出して、セカンドはどうなるんだろう、、、?ってことで19年「Heavy Is The Head」です。発売前に「Vossi Bop」がUKチャート1位をとったり、「Shape of You」に引き続きEd Sheeranに客演した「Take Me Back To London」も1位になったりで、期待値MAX下での登場です。まず「Big Michael」で仰々しく始まり、UKドリルの雄Headiest Oneゲストの「Audacity」でいきなりカマします。「Crown」は少しロックっぽい雰囲気はあるかなりメロディアスな曲、「Rainfall」はちょっとレゲトンっぽい雰囲気で、サビがDrakeっぽいキャッチーな曲。静かにゴスペルムードな「Don’t Forget to Breath」からなだれ込む、H.E.R.ゲストの「One Second」はかなり熱の入ったバラード曲です。

 

この曲をちょうどアルバムの中心として、後半はまずAitchをゲストにこれまたレゲトン風味のカッコいい「Pop Boy」、Ed SheeranがBurna Boyと登場する、話題性充分なこれまたレゲトンテイストor アフリカンビーツな「Own It」が続きます。これはかなりポップな肌触りの曲です。流石というか、、、そして、グライムレジェンドのWileyを称える「Wiley Flow」(これがきっかけでケンカになったらしいけど、、、)は、当然気合充分なラップ。そしてスローなR&B的な曲が続き、先行ヒットの「Vossi Bop」なんですが、この曲がまた素晴らしいです。全体を取り巻く不協和音の中、ボボボっていうリヴァース気味なスタッカート低音と、ウッウーンていう更に低いとこを這う低音の組み合わせが、何とも不穏で激カッコいいです。

 

全体で言えば意図的なのか、あまりグライムにこだわってなく落ち着いた感がありますが、色んな曲とゲストでモンスターアルバムみたいになってて、ある意味かなり手堅い内容でもあります。しかし、多大な期待の中、これだけ高いレベルで手堅い作品を作れるっていうのは、本当にスゴいと思います。当然、サードアルバムが楽しみです!

 

 

69位、JUSTIN BIEBER「JOURNALS」(2013年、R&B)、ジャスティン・ビーバー!?って思いました。もちろん名前は知ってますが、イメージは、、、4つ打ち大ヒットポップスキッズアイドルって感じで、この記事に登場したことがビックリしたのです。つまり、ちゃんと聴いたことがなかったのです。反省して、「Believe」を聴いてみましたが、LudacrisやBig Sean、Drake、Nicki Minajが参加していようがあまり印象変わらず、、、「Believe Acoustic」なら、、、印象変わらず、、、

 

でもここで、ちょっとおもしろいと思いました。この人、すごい売れ線アレンジの実際大ヒット曲とかも、ほぼアコースティックバージョンを出してるんですね。2度売れる戦略と言われればそうかもしれないけど、、、写真見る限りレフティーですね(羨ましい)、、、それにしてもすごいセールス記録、、、エルヴィス・プレスリー並みじゃないですか?白人の超歌上手い超ハンサムな男の子が、黒人音楽が大好きでアコースティックギター持って大ヒット連発するって構図が、、、もちろん、エルヴィスは突然変異かよってぐらい内容もすごかったんですけど。

 

で、この「Journals」確かに、これはすごくいいアルバムです。全曲いい!、、、って思ったら10週連続シングルリリース企画(13曲あるけど)のコンピ的な作りだったんですね、つまりシングル集。これやってる途中で違うシングル「Wait For A Minute」(この曲もいい)も出してる余裕があります。全体の内容も、前作を考えたら一気に20歳ぐらい年取ったのかな、てぐらい大人な感じです。どの曲もいいし、曲調、アレンジもカッコいい。トラップ要素もあるし、R. Kelly、Chance The Rapper、Lil Wayne、Futureなどのゲスト参加曲もそれぞれ工夫があります。クセになるような、何度も聴けるすごくいいアルバムです。デジタルアルバムですが、日本盤のCDも出てます。

ウィキペディアすごい長いな、、、13歳でデビューしてビルボード1位なんですね。YouTube出身とか。そうか、もともとがアコギだったのか、、、人気絶頂時に声変わり、、、おもしろい、、、もしかして、現在アコギを持って活躍してるミュージシャンとか、結構影響とかあったのかな、て思いました、世界全体的に。

 

この「Journals」の感じで、SkrillexとDiploとの先行シングル「Where Are U Now」をかっとばして、次のアルバム「Purpose」が出ます。その流れのせいか、Skrillexが5曲プロデュースしてて、「I’ll Show You」、「Sorry」、「Children」は、Where Are U〜流れのトロピカルハウス路線で、心地良くてキャッチーですごくいいです。Halseyゲストの「The Feeling」も、かなり浮遊感あるグッドなトラックです。いい仕事してます。Ed Sheeranとの共作「Love Yourself」はスカスカなエレキギターのトラックで斬新さを感じました。話題性もあって曲も良く、なかなかのモンスターアルバムじゃないでしょうか。

 

そしてなぜか5年も空いて「Changes」が出ます。このタイミングで5年は相当なんじゃないでしょうか?何故だかは分からないです!でもこの間に、ゲスト参加でMajor Lazerの「Cold Water」、DJ Snakeの「Let Me Love You」、Luis Fonsi & Daddy Yankeeの「Despacito」などの異ジャンルで大ヒットをギュンギュンに飛ばしていたり、Billie Eilishの「Bad Guy」とかカントリー系のDan & Shayの「10,000 Hours」などに参加してたりしてて、まあ全然休んでたわけではないようですが、、、このアルバムは驚くほど大人しく、ひたすら気持ちいいシンセリフかギターリフが続き、曲調もテンポも、良く言えば統一感、悪く言えば同じようなものばかりです。自分は、こういう音で統一感のあるアルバムは好きです。歌詞がなかなかシラケる感じっぽいんですが、幸運なことに英語なんで全然気になりません。

 

1曲目「All Around Me」からおもしろいエレキギターのスカスカした音が空間を作って、そこに無菌ヴォーカルが漂います。「Come Around Me」は高い女性コーラスがシンセの一部のように使われててふわーっとした効果を出しています。「Intention」ではトロピカルハウスチックなシンセが気持ちよくて、キャッチーです。ちょっとレゲエっぽい感じがあります。「Yummy」もレゲエテイスト?ポワーっと明るい感じです。「Available」は女性コーラスが明るい光のような、スローレゲトンチックなトラック。しかし、どの曲もジャスティンが気持ちよさそうに歌っています。

「Forever」はひときわ気持ちいいトロピカルシンセリフ。「Running Over」も同じ系統のサウンドですが、アルバムの中ではややテンポ速めで、かなりキャッチーなトラックです。いい曲!

 

「E.T.A.」は、スカスカエレキギター・コードワークがおもしろいトラック。こういうシンプルさはとてもいいと思います。次のアルバムタイトル曲「Changes」と次の「Confirmation」は、それのアコギ版。ただでさえ大人しいアルバムが、更に静かに集中的になっていきます。「That’s What Love Is」も同じアコギ路線ですが、ギタープレイが非常に興味深いです。カポでかなり上げているのかな?かなり高い音範囲でのコードワークです。この曲もかなりキャッチーなリフで、ジャスティンは更に自由に開放的に歌っている感じがあります。このように、自分には、かなり聴き所があるいい作品でした。

 

最新作21年の「JUSTICE」では、この無菌成熟なテイストを持ち込んだまま、今度は色んなプロデューサー陣を従えて、なぜか80sテイスト全開な内容になります。マーティン・ルーサー・キングの2回に渡る引用は置いといて、この変化はなかなかおもしろいです。フィル・コリンズ・オマージュの2曲目「Deserve You」からもう、80sトラップR&Bです。次の「As I Am」は、まるでティアーズ・フォー・フィアーズです。「Off My Face」は、お得意のスカスカエレキギター・コードワークで、ちょっとビートルズっぽいです。Chance The Rapperゲストの「Holy」はゴスペルなんですが、これもなぜか80sテイストがあり、トーキング・ヘッズのようです、、、そういえば彼は、社会的弱者を支援するいくつかの団体に寄付とかもしているようです。

 

前作が5年はぶりの発売だったのに、今回はたった1年です。しかもデラックス盤だと最大25曲もあります。コロナでツアーがとんで、暇だったせいもあるみたいですが、彼は今までと別の理由で創作意欲に溢れているようです、、、で、「Die For You」も80s全開で、カーズのようです。ベースがブリブリの「Hold On」はリック・スプリングフィールドみたいだし、「Somebody」はケニー・ロギンスのようです。80年代洋楽が青春期だった自分には、なかなか楽しいアルバムです。色んな人が替え歌みたいなことをやってバズった「Peaches」には、LudacrisとUsher、Snoop Doggのバージョンなんてものもあります。

 

80s一辺倒ではなく、ダンスホール若手BEAMゲストの「Love You Different」や、アフリカンビーツ若手Burna Boyゲストの「Loved By You」も非常に出来がいいトラックだと思います。「Anyone」は再び80s節で、ブライアン・アダムスみたいです。ボーナストラックのほうもかなり楽しいです。「There She Go」では更に80sテイストが強い曲にLil Uzi Vertが絡む楽しい曲です。「I Can’t Be Myself」は、スティーリー・ダンっぽいです。今、80sっぴって書いているものはすねて、同時にやたらキャッチーってことでもあります。「Know No Better」ではトロピカルムード最高のトラックに、最近ステージ失言で株落としまくったDaBabyが絡みます。そういえば、全開評判最悪だった歌詞は、今回はどうなんでしょうか、、、?「Name」は、再びお得意のパキパキギターで、女性ヴォーカルAtori Kellyとカントリートラックです。「Red Eye」は少し壊れたレゲトンみたいで、遊び心があるトラックでおもしろいです。

総じて、かなり80sヒット曲コンピのようです。LCD Soundsystem手法というか、、、これでまた、80sプチリバイバルが起こるかもしれません。アルバムの曲は数曲、Tiny Diskっていう自宅ライブでビーバー+5人編成のバンドで演奏されていて、結構見応えがあります(YouTubeで)。

このままの勢いで、来年もこれぐらいのサイズの作品が出るのかなあ、と思ってたら、もう6曲入りの「Freedom EP」というものが出ました、スゴい!これは、イースターの祝日に発表されたゴスペルアルバムということで、6曲中5曲にゲストがいて、更にそのうち3曲はクリスチャンシンガーのChandler Mooreが参加です。唯一のゲストなし曲「We’re in This Together」では、ビーバーがちょっとChance The Rapperっぽいラップをやっています。内容は当然、ゴスペル路線で、1曲目のEPタイトル曲「Freedom」がシャーデーみたいな感じ、「Where Do I Fit In」は、ほぼひやーっと鳴るオルガンだけをバックにスピリチュアルしています。まあ、これはこういう企画盤ってことで!

 

 

 

68位、DEAN BLUNT「THE REDEEMER」(2013年、ART POP)、この人は、この記事で出会えた中でもかなり大きい存在でした。とにかくすべてが謎めいていて、すべてが山師っぽくて何とも言えない魅力があります。変名が多く、それらを聴いていこうが、この人についての記事を読もうが、特に何かがクリアになるということがありません。おもしろい存在です。もちろん、1番魅力的なのは、その独特なサウンドなんですが、、、

 

古いのから適当に聴いてみます。まず彼の活動というのは、Inga Copelandという女性とのユニット、Hype Williamsから始まっています。有名な映像監督の名前まんまです。ふざけてますよね?意味分かんないし、、、2009年の3曲入りEP「Han Dynasty」が最初の作品っぽいです。完全に宅録ローファイな音ですが、独特なダブ感覚や変なドリーミーさ、ワケ分からなさなどは既にあって、でもまだ知り合いがちょっと変な音源作った、なかなかおもしろい、ぐらいの感じですかね。同年にも「High Beams」という5曲入りのEPも出してます。これも似たような感じですが、ちょっと初期ロイヤル・トラックスみたいな曲とかもあります。

 

アルバムらしき形は、いちおう2010年にまず、「Junt / Deez Ruins You See」というカセットで発表したものがあるんですが、3曲入りで3曲とも長尺なフリークアウトセッションだか宅録セッションだか、そういう音です。大学のサークルに入ったら、まずスタジオで始まっちゃうみたいな感じ。レコードリリースとしていわゆるファーストアルバムは、同年の「Untitled」です。レコードデビューでこのタイトル、ふざけてますよね?、、、音質はまだまだローファイなものの、既にドラムマシンとシンセ中心のヴェイパー霧ダブっぽい感覚は、ここで展開されています。しかもやはり、何だかいいんですよね、聴いてて、、、これ、結構いいアルバムだと思います!

 

2010年は、EPも3つ出していて、まずは「Do Roids and Kill E’rything」、なんといきなり最初の曲「Ooorrr」ではラップをカマしてます。あとは、シャーデーの「スウィーテスト・タブー」のサビまでいかないカバーとか、、、次に「Kaartel Vol.4」、これはうるさめのコラージュっぽいバンドサウンドが18分以上続く感じです。3つ目の「Dior」は7曲入りのEPで、見るからにコンセプチュアルです、、、この作品から音質が向上しています。内容も一段良くなった気がします。

 

2011年、「Find Out What Happens When People Stop Being Polite, and Start Gettin’ Reel」がリリースされます。こうやって順番に聴いていくと、このへんが変革期かな、と思います。音質の変化が特に、最初期のテレコ的な音も微妙に残りながら、リズムやシンセの音はクリアになりつつ、そうなるとクラブミュージックっぽい部分もあったり、ただの不明瞭だった音がクリアになって、意図的なエコー処理が判明できてきたり、ヴェイパー度も上がってきましたが、よく考えるとヴェイパー最重要作「FLORAL SHOPPE」が2011年なんで、結構先行的なセンスとも言える気がします、、、でもまあこういうの、昔からあったんですよね、DJプレイ的な側面で。とにかく自分は知らなかったけど、ここには既にヴェイパーウェイブもチルウェーブもローファイヒップホップもあるように聴こえます。意外と歴史的な盤だったりして、、、内容もいいし。

 

そして2011年になり、「One Nation」が出ます。ほぼ同じ感じですが、すっかり音質がクリアになって、ある種のキャッチーも獲得しています。すっかりクラブ仕様みたいな音にもなってきました。制作意図や美学は相変わらず不明瞭ですが、、、やっぱり何かこう抜群のセンスを感じます。ずっと霧がかかっててよく見えない、人工的な世界を彷徨っている感覚になります。最後の2曲、「Break 4 Love」と「Untitled (And Your Batty’s So Round)」は、すごく良くて感動しました。

 

11年もEPが出ています。4曲入りの「Kelly Price W8 Gain Vol. Ⅱ」、かなりR&B的な(違うけど)感じがあります。ところでKelly Priceって誰?、と思って調べたらゴスペルシンガーでした、、、この年にはDean Bluntソロ名義で「Jill Scott Herring OST」っていうサントラ?が出ています。鐘の音みたいなものの短いサンプリングフレーズが延々と続き、時々コラージュ系の音が入ってくる極めて退屈な内容です。

 

同じく11年、作品ではないですが、Fact紙企画のDJ MixシリーズにHype Williams名義で登場しています。選曲がかなりおやじ趣味に思えますが、、、Steely Dan度が高いです。それも含めて全体意外な感じでおもしろいですが、、、特に曲と曲をつないでるって感じじゃなくて、ただかけてるだけです。まあ、楽しいですけど、、、

 

2012年には、ついにHyperdubからデビューにもなったんですが、名義がDean Blunt & Inga Copelandになってて、、、あれ、折角のHype Williams名義は、、、?アルバム名は「Black Is Beautiful」ですが、ジャケにはアーティスト名でもアルバムタイトルでもない「Ebony」の文字が、、、ふざけてますよねー、、、つまり、ほとんどいつも通りというか、終始不可解な感じですがやはり妙に魅力的な音楽です。センスだけを聴いているような気がしてきます。何気に色んな音楽を内包してるし、サンプリングかオリジナルか分かりにくいおもしろさがあるし、どっちにしろ曲とかフレーズがいいんですよね、、、埋もれたサイケ名盤発掘再発、みたいな雰囲気もあります。色んな意味において真骨頂な作品だと思います。同じく12年、Dean Bluntのソロ名義で「The Narcissist Ⅱ」が出ます。これがいちおう初ソロ名義作品ということになるらしいです。セリフとか状況音とか入って演劇っぽい構成の30分ぐらいの内容です。ジャケはまたしても、アーティスト名もアルバム名も関係ない「Proibito」(禁止の意味)の文字、、、最後に本人のラップが披露されます。

 

充実している12年ですが、この年には更にDean Blunt & Inga Copeland名義で33曲入り90分越えの「The Attitude Era」もリリースされています。一体どういうことなのでしょう、こんなにひねくれまくっているのに、ものすごい創作ペースです。内容はさすがに少々荒くてダラダラしてるものの、センスは健在だし、この延々とした取り留めの無さっていうのは、彼らの持ち味でもあるような気もしていいかも、とか思います。限りなくミックステープっぽいんですが、それにしてもよく分からないリリースです、、、

 

そして2013年、ここで今回の記事に取り上げられている「The Redeemer」が出ます、意味は救世主です。ジャケは今度は文字じゃなく合掌のシンプルイラスト。まあ、どっちにしろ毎回よく分からないアートワークですが、、、今までの手法やセンスをダブ的なエコーや低音やリズムを使わずに作った感じで、これは本当にすごい作品じゃないか、と思います。今まで何度も聴いてますが、全く飽きません。色んな工夫が、美しいいい曲が、更なる謎が広がっています。結構、究極な作品だと思います。自分はものすごく好みです、大名盤です。

 

2014年には、お返しとばかりにInga Copelandのソロ「Because I’m Worth It」も出ます。これが初ソロ作品かと思いきや、前年の13年に3曲入りEP「Don’t Look Back, That’s Not Where You’re Going」が出てました。しかも、本人のbandcampを覗いてみると、当時CD-R手売りしてたっぽい「Inga Copeland」が11年ということで載っています。これが最初のソロ作品ですかね。白いCD-Rに、青色ペンで名前を殴り書きしただけのものです。これは4曲入りで、どんなもんだろうと聴いてみたら、予想以上にマトモで内心驚きました。カッコいい打ち込みシンセトラックにニューウェーヴパンクっぽいヴォーカルが乗るスタイル。クールです。そして「Don’t Look〜」では、Scratcha DVAゲストに迎えた1曲目の「So Far So Clean」とかかなりカッコいいトラックで、他の2曲も現代のシンセポップパンクって感じで3曲全部かなりいいです!

 

こうして聴いていくと、この「Beacause I’m〜」は、出だしからきつめのパルスをカッということばしてますが、基本は前EP路線と、完全にエクスペリメンタルなトラックの混合といった感じで、非常に良い内容だと思います。こんな作品、ちょっと他にないんじゃないか、とも。Hype Williamsは2人共スゴいんだなあ、と思った次第なワケであります。

2014年には、Bluntもソロ作品をリリースしています。まず、ジャケがThe Redeemerの白黒反転の「Skin Fade」です。ヴォーカルにJoanne RobertsonというどこかCopelandに似ているような女子を全面フィーチャーした8曲27分の小品です。内容は別にThe Redeemerと共通点があるわけではないです。90年代のサントラ・ブレイクビーツみたいな雰囲気があります。そこに女子ヴォーカルが乗っかっているわけですが、これがなかなかいいです。特に統一感はないけど意味不明な統一感みたいなものがあります。

 

それから、まあまあ問題作な「Black Metal」があります。こうやって彼の音楽を追っていくと、結構驚きな作品です。前半はギターポップムードで、Big StarやPastelsをサンプリングしてちょっとゲンズブールっぽく歌っています。中盤に20分近い、長い不可解な曲を挟んで後半はダブやグライムなどにいきますが、そこでも歌ったりラップしたりしています。ここまで色々やっても、結局は彼の印象はあまり変わりません。謎めいているというより、これが彼の個性なんだと思います。そしてこの作品は、とてもおもしろくてかなりいいです。

2015年は、Bluntのリリースはなく(たぶん)、CopelandがLolinaという名義で3曲入りのEP「Relaxin’ with Lolina」を出しています。相変わらずおもしろい独特なサウンド、曲、ヴォーカルです。現代音楽のように聴こえる曲まであります。

 

打って変わって2016年はBluntが活発になります。まず、Babyfather名義で10曲入り33分の「UK2UK」、14曲入り33分の「419」、8曲入り24分の「Platinum Tears」、そして23曲入り50分以上の「BBF」を連発します。おまけにこの年は、なんとHype Williams名義でも「10/10」っていう10曲入りのアルバムも出ています。マジスゴいですよね、なんか狂ってていいです!ついでに言うと、Lolinaのほうも「Live In Paris」っていうものが出ています、、、

 

Babyfather名義のほうは、Bluntはいつもよりヒップホップ要素が強く、直接的で暴力的な音と言葉表現が多めです。ラップと語りがかなり多いです。めずらしく(初めて?)女性ヴォーカルのゲストがいません。そして相変わらず終始、煙に巻くような感じがあります。数曲、ArcaやMica Leviなど、自分と似たような異端の才人をゲストに迎えてますが、大して効果があるような感じではないです。どの作品も、何度聴いてもよく分からないんですが、強烈に惹かれる何かがあります。ここにきてかなり新しい展開でもあります。やっぱ天才ですかね、、、

 

解散したと思いきや、しれっと復活のHype Williamsのほうは、作品出たは出たけど、これ本当に復活なのか?っていう謎の内容。まず、Copelandのヴォーカル一切なし。サンプリングやノイズ、コラージュなどのフェイクっぽい毒っ気あるユーモアもなし。ただひたすら、普通にインストのクラブ曲が並んでいます。いいと言えばいいような、何だこれって、とも言えるような、、、翌年の16年にも「Rainbow Edition」という20曲入りが出ますが、もはやBluntもCopelandも関係してないとか、相変わらず惑わす情報もセットです。こちらも、声は入ってきたものの、録音されエフェクトされた会話中心で、無名性が高く音楽のほうもどこか廃れたアーケイドで鳴ってるような超ヴェイパーなシンセインストが並びます。それでもおもしろく感じるのは、既に自分がBluntの術中にはまっているのかもしれませんが、、、

 

Copelandのほうもトバしています。Lolina名義の「Live in Paris」、これたぶんライブ盤ってことではなく、タイトルと同名の曲が入ってるっていう紛らわしいものだと思います。映像とセットの作品のようですが、自分は音だけ聴きました。とても奇妙な音楽です。映像ありきだからかもしれませんが、打ち込みなのにリズムとか色々なものがよじれていて、平衡感覚がおかしくなるような感じです。彼女もまた奇才なんだなあ、、、と思わせてくれます。実はこれが、いちおうファーストアルバムってことになるみたいですが、、、

 

2017年は、そのLolinaの3曲入りEP「Lolita」が出ます。これは強烈なニューウェーブ系歌モノエレクトロニクスって感じでかなり強烈、硬派でカッコいい音です。対するBluntは、Copelandの後釜的な存在っぽいJoanne Robertsonとのコラボ「Wahalla」を出していて、これがかなり、、、サイケデリック、アシッドフォークとして良作で、驚きました。こういうのもちゃんと作れるのか、、、とか思ってたらこの年は、Blue Iversonという新たな名義でも「Hotep」という8曲入りのR&B試作のようなものを出しています。一体この人はいくつ名義を、、、やはり才能ズバ抜けたカオティックな人なんだなあ、、、

 

2018年になり、Bluntはソロを2枚出します。「Muggy Vol.1」と「Soul On Fire」です。どちらも9曲入りの、小さめのアルバムです。特にコンセプトはないようです。色んなゲストヴォーカルが参加していますが、Muggyのほうは詳細を出していません。Soul On〜のほうは、冒頭からA$AP Rockyでちょっと驚きます。どちらの作品も、各曲にまとまりがなく長さも短めの中途半端な感じのトラックばかりですが、これがまたいいんですよね、どれも。色々取り込んでいるのに、結局他にはないものを聴いているような気がします。コンセプチュアルじゃない分、かえってその不思議な印象が強まります。この辺を聴いていると、もうソロ名義は、色々計画せずに出来たものをただ出す、て感じにも思えます。すごくいいです。

 

Lolina のほうも、早速セカンドアルバム「The Smoke」が出ています。こうして考えるとHype Williamsは、かなりすごい男女デュオだったんじゃないか、と思われます。このアルバムの音も、極めて奇妙なオリジナル感溢れる内容で、とらえどころがないし、盛り上げみたいな熱量が一切ないんですけど終始魅力的な、何だこりゃ!?っていうような非常にとっつきにくい音楽集です。マジで天才なんじゃないか、と思います。もちろん、過去にそういう音楽を作ろうとした人、人達、ムーブメントは多々ありましたが、そういうものは時代を重ねるにつれてどんどん難しくなってきます。彼女の孤立したセンスと性格、美学は相当なものじゃないでしょうか、、、この作品は、そうしたところを踏まえて尚、輝ける傑作じゃないかと思います。

 

次の年の2019年にも、Lolinaのアルバム「Who is experimental music?」が出ます。これまた今までリリースしたどの作品にも似てません。ついにヴォーカルがサンプリングされて操作され、声なのかどうか分かるギリみたいなところで反復され、奇妙なリズムを作っています。結果、カッコいいミニマルなクラブトラックに聴こえます。手法は新しいけど、作品全体はこのアイデアで統一されています。しかし、どれだけ凍りついた心なんだろう、とも思います。

一方Bluntのほうは、「Zushi」というアルバムでひょうひょうと出来たものを出す、みたいな雰囲気のものをリリースしています。このアルバム、Panda BearやYoung Lean、A$AP Rocky、Mica Leviなどが参加していますが、まあほとんど影響はないです。何度も登場するJoanne Robertsonだけが、コラボアルバムぐらいの印象です。音はへろへろエレキギターが多く、USインディーの栄光のレーベルたち、K RecordsとかShimmy Discとかあたりを連想します。なので、自分は結構好きですねー。

 

Joanneのことは余程お気に入りなのか、新しいパートナーなちょっとズレて、最近のBlunt本人のレーベルである、World Musicから、余程お気に入りなのかJoanneのソロ「Painting Stupid Girls」が出ています。タイトルもジャケ写もそこはかとなくビミョーな印象の6曲入りですが、内容はシリアス目な、暗めのアコギ弾き語りリヴァーブたっぷり系で、変な言い方ですが、意外とかなり良かったです。ここでようやく、彼女のことが気になり、色々聴いてみました。

 

どうやら、2008年に最初のソロアルバム「The Lighter」を出しています。意外とキャリア長いです、、、ていうか、Hype Williamsの2人より長くね?、、、で、この作品は本当に宅録ローファイフォークって感じで、少し変なセンスがあって微笑ましい感じです。歌は立派ですが、逆に少しありがちにも聴こえます。次のアルバムはなんと7年後になります。何してたんでしょうか(余計なお世話)?、、、

 

その2015年の「Black Moon Days」は、基本的にそんなに変わらず、歌はギターの上をスロウにふわふわと漂う感じになっています。数曲エレキギター弾き語りがあります。そしてやはりある種の独特さがあります。次の年にはもう次のアルバムを出しています。急にギアが上がったんでしょうか?、、、16年発売の「Wildflower」は、エレキギターやエフェクター、バンドサウンドなどでインディーロック風にガラッと変わります。違和感はないんですが、一層地味に感じてしまう気がします。こうして順に聴いていくと、最新作のPainting〜がスーパーリヴァーヴィーフォークっていうのは、正しい選択だったような気がしてきます。

 

、、、というわけで、脱線しましたが戻ります。2019年、この年は、「Free Jazz」というコンセプトまんまなロンドンCafe Otoでのライブ盤もあります。これはBluntの流れだと新しいですが、音には新鮮さはそんなにないです。いちおう構成らしきものがあって、時々音響的な試みも聴こえますが、、、

 

この年はもう1つ、最大の問題作があります。「Roaches 2012-2019」という、タイトルからしてもおそらく8年間の中から何らかの基準で音源を集めたもので、なんと56曲も入っています。これは事件ですね!もはやあまり話題になってないっぽいのがさびしいですが、まあ確かに余り物寄せ集め感がぷんぷんしてます、、、しかしこう言っても何のフォローにもなってないかもしれませんが、彼の作品はもともとどれも、どこか中途半端な寄せ集め感があったんじゃないか、と。だから、この膨大な量のそんなに集中力のない作品集を聴いていても、実はそんなに印象は変わらないのです。だから、これも結構いい作品なんじゃないかと思います。

 

とうとう最後ですが、今年になって「Black Metal 2」が出ました。敢えて「1」と比べると、より歌もの寄りでクラブ要素がかなり薄れ、HIPHOPやR&B色までも弱まり、ほとんどギターポップとかアノラック系のサウンドになっています。そして相変わらず、なぜか妙におもしろい音楽です。今回は、今までの彼のやってきた部分を踏襲しつつ、比較的素直な作品なんですが、ちょっといじけた感じが漂ってて、泣きはしませんが泣けてくる感じがあります。

 

 

以上、思ったより長くなってしまった前編でした!1回アップしたのに、後に倍ぐらいに更新したんで、時々時系列がおかしなところがありますが、まあ分かるだろうと思います!

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